経済停滞の現状とその影響

失われた30年とは?

「失われた30年」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?


1999年生まれの私にとっては

生まれている期間全て失われているように聞こえ

かなり嫌な言葉ですが、

これは、日本経済が約30年間にわたって停滞し続けている

状況を指します。


バブル経済が1993年に崩壊してから、

日本の経済は成長が止まり、

物価もあまり上がらず、

給料も増加していません。

出典:日本生命HP


出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構


どちらも本当にバブルが崩壊して以降停滞していますよね。


実はこの成長鈍化・低インフレ状況は

「ジャパニフィケーション」と世界から

懸念されています。


なぜ経済が生活に影響を与えるのか?

「経済のことは自分には関係ない」

そう思うかもしれませんが、

実はそうではありません。


例えば給料があがらなかったりするのは

この経済停滞の影響を受けているからです。


また身近なことを言うのであれば、

iPhoneの値段の高騰も影響の一つです。

出典:ファイナンシャルフィールド

実はiPhoneの価格は上がっていないことをご存知でしょうか?

機種があがるごとに高くなっているのは

円安が要因です。


「円安の要因は金利差がーーーー!」

という方もいますが、

長期的にみれば国の力が通貨の力なのです。

経済の停滞はこのように私たちの生活にも

影響を及ぼしてくるのです。


『奇跡の経済教室』が示す解決策


『奇跡の経済教室』とは?


『奇跡の経済教室』(中野剛志著、2019、株式会社ベストセラーズ)

という本をご存知でしょうか?


この本は、日本経済が抱える問題をわかりやすく

解説し、どうすれば停滞から脱出できるかを

教えてくれる一冊です。


難しい経済の話を、

著者曰く

「これ以上は無理!」

というくらいにわかりやすく

噛み砕いて説明しているので、

普段敬遠している経済に詳しくない人にも本当におすすめです!


実際私も大学生のときに初めて読みましたが、

目からうろこという感覚を味わった

数少ない名著です。


停滞を打破するための理論と施策


『奇跡の経済教室』では、

日本経済が停滞した要因を明確に論じています。



平成日本は、デフレ化にあったのに、

新自由主義のイデオロギーを信じ、

インフレ対策

(財政支出の削減、

消費増税、

規制緩和、

自由化、

民営化、

グローバル化)

をやり続けた。

その当然の結果として、

平成日本はデフレから脱却できず、

経済成長できなくなった。


結論はたったこれだけです。

一体どういうことなのでしょうか?

以降、本の引用をしながら補足をしていきたいと思います。


『奇跡の経済教室』具体的引用


デフレとは


デフレとは、

一般的には、

一定期間にわたって

物価が持続的に下落する現象のことを言います。

(中略)

デフレはどうして起きるのでしょうか。

それは、経済全体の需要が、

供給に比べて少ない状態が続くからです。

「需要不足/供給過剰」が、デフレ

を引き起こします。

(中略)

つまり、モノが売れない状態です。

モノが売れない状態が続くのですから、

企業は赤字が続き、

最悪の場合は倒産します。

労働者は賃金が下がり、

最悪の場合は失業します。


いわゆるデフレの定義ですね。

短いながらのコンサルタント経験ですが、

需要がないというのは本当に深刻です。


企業にとって、利益が一番大切ですが、

結局トップライン(売上)の改善なしには、

利益も劇的に改善しなければ、

資金繰りも厳しくなるのです。

そのため、企業にとってもどう需要を作るか

これは至上命題と言えるでしょう。


しかし、モノが売れないならば、

企業が生産を縮小し、

労働者が働く時間を減らせばよい。

そうすれば、

供給の過剰が解消されて、

需要と供給が一致し、

物価の下落はとまるはずだ。

そう言いたいところですが、

残念ながら、そうはならない。

というのも、需要とは、

「消費」と「投資」です。

そして労働者は賃金が下がると

「消費」をしなくなるので、

需要が減少してしまうのです。

賃金が下がっても、物価もさがるのであれば、

問題ないように思われるかもしれません。

しかし、実際には、

人々は給料が減ると、

先行きに不安を覚えて、

支出を控えるものです。

賃金の下落が、

将来に対する予想を悲観的にし、

消費を抑制させるのです。

同じように、

企業もまた、

赤字になると「投資」を控えます。

投資とは、将来得られるであろう利益のために、

現在、支出することです。

将来景気がよくならないであろうという

悲観的な予想を企業が抱けば、

投資は行われません。

現在の赤字は、企業の将来予測を悲観的にするのです。

そして、足元で商品が売れなかったり、

給料が上がらなかったりすれば、

人々の将来予想は、

さらに悲観的になり、

もっと支出を控える…

こうして、消費も投資ももっと減り、

需要はさらに縮小します。

つまり、供給は縮小しますが、

需要はそれよりさらに縮小するので、

「需要不足/供給過剰」

の状態は解消されないのです。

この悪循環が繰り返されて、

デフレは持続することになります。

いわゆるデフレスパイラルという状態ですね

出所:『日本病』(永濱利廣著)


個人も企業も将来に対する不安は

支出を抑制させるのです。

個人に関しては想像できると思いますが、

実は赤字企業も相当なプレッシャーを

金融機関からかけられます。


「投資する前に借入を返済してくださいよ!」

そう迫られるからです。


デフレとは、

物価が継続的に下落することですが、

裏を返すと、

貨幣の価値が継続的に上昇するということです。

デフレとは、持っているおかねの価値があがっていく現象なのです。

ところで、持っているおかねの価値が上がっていくことは、

問題なのでしょうか?

多いに問題です。

なぜなら、おかねの価値が上がっていくならば、

人々は、モノよりもカネを欲しがるようになるからです。

消費者であれば、モノを買わないで、

カネを溜め込むということです。

企業であれば、投資をしないで、

貯蓄を増やすということです。

デフレにおいては、借りたカネはどうなるでしょうか。

貨幣価値が上がっていくのがデフレですから、

借金は借りた時よりも返す時のほうが

実質的に膨らんでいるということになります。

このため、デフレになると、

誰も銀行から融資を受けなくなり、

むしろ返済を急ぐようになります。

(中略)

このようにして、デフレになると、

経済成長が止まってしまいます。

これが、平成日本で起きたことです。

世界中で日本だけが長期のデフレなので、

日本だけが極端に成長していないのも当然です。

日本が成長しなくなった最大の原因は、

ずばり、デフレです。


『インフレ率2%目標』、

『デフレからの脱却』

こういった用語をなんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか。


なぜデフレをそこまで忌避するのか、

それは経済を縮小させるからだったのです。


では逆にインフレとはどういう状態かを

また引用してみましょう。

インフレとは


インフレは、「需要過剰/供給不足」

ですから、モノが売れまくる状態。

企業は供給を拡大すべく、旺盛に投資を行います。

労働者は、賃金が上がっているので、消費を増やします。

別の言い方をすれば、

インフレは、貨幣価値が下がっている状態ですから、

人々は、カネよりもモノを欲しがります。

また、借りた時よりも返す時のほうが貨幣価値が下がるならば、

カネは借りたほうが得だ。

というわけで、消費者はローンを組んで

住宅や自動車を購入し、

企業は銀行からの融資を受けつつ、事業を拡大します。

こうして、消費や投資がさらに拡大し、

「需要過剰/供給不足」が続きます。

消費や投資の拡大が続き、

重要の拡大に合わせて供給も拡大する。

これが経済成長というものです。

ですから、経済成長は、基本的には、

インフレを前提にしている

と言ってもいいでしょう。

合成の誤謬


ここでミクロとマクロの違いがもっとも現れる

重要な概念についても補足をしたいと思います。

それは「合成の誤謬です」


もう一度、確認します。

デフレとは「需要不足/供給過剰」の状態です。

したがって、デフレを脱却するには、

需要を増やせばよい。

つまり、消費や投資を拡大すればよいのです。

そうすれば、デフレから脱却することができ、

景気はよくなって、経済は成長する。

そうであるならば、人々が消費や投資を増やせばいいのです。


しかし、それが口で言うほど簡単ではないのです。

これまで述べてきたように、デフレ下では、

不景気なのでモノが売れません。

誰もが消費も投資も手控える。

むしろ、節約に励むでしょう。

そうすると、需要はますます

不足するという悪循環に巻き込まれることとなり、

デフレが続きます。


ここで、ぜひ押さえておいてほしい重要なポイントがあります。

それは、デフレ(需要不足)で不景気の時に、

個人や企業が投資を手控え、

貯蓄に励むというのは、

まったくもって

経済合理的な行動だということです。

給料が下がっているのに、

モノを買うのを増やすとしたら、

その人は、明らかにおかしいでしょう。

モノが売れないのに、

設備投資を拡大する企業があったとしたら、

その企業もおかしい。


景気が悪い時には、

支出を切り詰めなければ、

個人や企業は生き残れません。

不景気で苦しい時に、

節約して貯蓄に励むのは、

美徳ですらあります。

しかし、どうでしょう。

個人や企業が支出を減らしたら、

需要が縮小して、

景気はますます悪くなるのです。

節約という、

人々が苦しさを乗り切ろうとしてとった

合理的な行動が、

経済全体で見ると、

需要の縮小を招き、

人々をさらに苦しめるという不条理な結果を

招いているのです。

このように、個々の正しい行動でも、

それが積み重なった結果、

全体として好ましくない事態がもたらされてしまう。

このような現象を、

経済学の用語で、

「合成の誤謬」と言います。


さて、この「合成の誤謬」の問題を解決するには、

どうしたらよいのでしょうか。

企業や個人の個々(ミクロ)の行動が正しいと、

全体(マクロ)として間違ってしまうというのが

「合成の誤謬」です。

だとすると、企業や個人といったミクロレベルの行動では、

「合成の誤謬」はマクロの経済全体の運営をつかさどる

「政府」が直すしかないのです。

ここに、政府の存在意義があります。

「政治がどうであっても生活に変わらない」

そういう風に思っている方はおおいのではないでしょうか?


ですが、裏金問題という話だけではなく

正しい施策が打たれなければ、

デフレからの脱却は難しいのです。


我々に与えられた選挙権は

企業のPDCA活動でいうところの

Cにあたります。


PもDもだめなことは明白ですが、

実はCである監視機能も弱いのではないか

と自問自答が必要なのではないでしょうか。


失われた30年の真因

さて、引用が長くなってしまっていますが、

最後に日本経済が成長しなくなった理由を

考えてみたいと思います。



この「合成の誤謬」を回避するためには、

企業や個人の行動を是正する必要があります。

それこそが、政府の役割です。

このように言うと、

「政府が、企業や個人の行動を正すだと?

そんなのは、傲慢なエリートの愚民観ではないか。

企業や個人をバカにするな!」

と怒り出す人がいるかもしれません。

しかし、私がいっているのは、そういう話ではありません。

政府が、企業や個人の行動を是正する(つまり経済に介入する)

必要がある理由は、企業や個人が馬鹿だからではありません。

どの反対に、企業や個人が合理的だからこそ、

政府介入が必要になるのです。

企業や個人の経済合理的な行動の積み重ねが、

経済全体に意図せざる結果をもたらす

というのが、「合成の誤謬」です。

そして、この「合成の誤謬」があるから

政府が経済に介入する

「経済政策」が必要になるのです。

まずインフレ対策を見ていきましょう。

インフレとは「需要過剰/供給不足」の状態です。

ですからインフレを止めるためには、

需要を減らし、供給を増やす必要があります。

では、需要を減らすには、政府は何をしたらよいでしょうか。

まず、政府自身が「需要」すなわち「消費」と「投資」を減らすことです。

公務員など公共部門で働く人の数も減らしたほうがいい。

要するに「小さな政府」にするということです。

また、政府は、民間の賞や投資を減らすこともできます。

民間の支出に対して課税をすればよいのです。

例えば、消費税を増税すれば、

人々は消費を減らさざるを得ないでしょう。

こうして、政府が支出を削減し、増税をすれば、財政は健全化します。

財政健全化とは、需要を抑制する政策なのです。

また、中央銀行(日本銀行)が金利を引き上げれば、

企業は銀行から融資を受けにくくなり、

投資を控えざるを得なくなります。

消費者も、ローンを組みにくくなる。

金融引き締め政策は、需要を抑制するということです。

次にデフレ対策を見ていきましょう。



デフレは「需要不足/供給過剰」の状態であり、

インフレとは反対の現象です。

ということは、デフレ対策は、インフレ対策を反対にしたものになるはずです。

つまり、需要を拡大し、

供給を抑制することが、

デフレ対策です。

具体的に見ていきましょう。

まず、政府は、みずから需要を増やさなければなりません。

例えば、社会保障費や公共投資を拡大するなどして、

財政支出を拡大するのです。

公務員など、公共部門で働く人の数を増やすという手もあります。

要するに「大きな政府」にするということです。

また、政府が、民間の消費や投資の増大を促進するひつようもあります。

そのためには、減税が効果的です。

例えば、消費税は減税し、

企業に対しても投資減税を行うのです。

政府が財政支出を増やし、税収を減らすということは、

財政赤字を拡大するということです。

財政健全化が需要を抑制するインフレ対策なのであれば、

その反対に財政赤字の拡大は需要を拡大する

デフレ対策だということです。

また、中央銀行は、金融緩和を行い、

個人や企業が融資を受けやすくすることが肝要でしょう。

こうした拡張的な財政金融政策が、

需要を拡大するデフレ対策です。


デフレは供給過剰の状態ですから、

供給を抑制することも、

デフレ対策として効果的です。

デフレの時に企業の生産性が向上すると、

供給過剰がさらにひどくなってしまいます。

ですから、デフレの時には、

企業の生産性は向上させないほうがいい。

したがって、企業間の競争は、

むしろ抑制気味にすべきです。

具体的には、規制緩和や自由化はしないほうがよい。

むしろ、規制は強化し、

事業は保護して、

多くの企業が市場に参入できないようにして、

競争をおさえるべきです。

企業はお互いに競争するよりもむしろ、

強調したほうがよいでしょう。

民営化も、

それが競争を激化させるのであるならば、

しないほうがよいでしょう。

もちろん、

どんな事業でも、

すべて国営化すべきというわけではありません。

しかし、なくなってしまうと

国民が困るような公益的な産業や、

あるいは倒産すると大量の失業者が出てしまったり、

倒産の連鎖を起こしたりしてしまうような

大規模かつ重要な産業であるならば、

一時的に国益化することも必要になるでしょう。

『奇跡の経済教室』


「おや?」と思うことも多いのではないでしょうか?

「郵政民営化」、「グローバル化」、「身を切る改革」

このあたりのフレーズは一見とてもかっこよく聞こえます

ですが、これらの政策こそデフレを長期化させているのではないでしょうか?

まとめに入りましょう。


平成8年(1996)年に設立した橋本龍太郎政権は

行財政改革、経済構造改革、

金融システム改革などの

「構造改革」を掲げ、実行しました。

その「構造改革」

とは、どんなものだったでしょうか。

公共投資をはじめとする財政支出の削減、

消費増税、

「小さな政府」を目指した

行政改革、

規制緩和、

自由化、

民営化、

そしてグローバル化……。

これらは、いずれも①のインフレ対策です。

「構造改革」とは、

「インフレを退治するために、人為的にデフレを

引き起こす政策」なのです。

(中略)

平成日本は、デフレ対策が求められるタイミングで、

「構造改革」と称するインフレ対策を実行しました。

しかも、それを20年以上、

続けたわけです。

これでは、デフレにならないほうがおかしい。

この本は非常にわかりやすいので、

(それを伝えるために長々と引用しました)

ぜひみなさんも読んで感想を教えてほしいです。

希望ある未来への第一歩


私は初めてこの本を読んだ時衝撃を受けました。

それは難しいと思っていた経済をわかりやすく伝える

著者の頭のよさももちろんですが、

何より「正しい」ことをしていると思っていた

政府が真逆の経済政策を実施していことに初めて気づいたからです。



少し先ほども触れましたが、

「政治家は終わっている」

そんな声を聞くこともあるでしょう。

そしてそれも自民党の裏金問題などを見ていると

間違いはないのかもしれません。


しかし、それ以上に政治に対する、

経済に対するチェック機能たる

われわれが機能不全に陥っているのではないでしょうか。


考えること、学ぶこと、投票することを放棄

してしまったが故の政治の機能不全なのではないでしょうか。


だからこそ一緒に何が正しいかをみなさんと考えていきたいと思ってます。

いろんな意見交換をできれば嬉しいです、

失われた30年を40年にしないために、

明るい未来を築くために、

今こそ私たちが考え、行動する時です。

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シイ

兵庫→愛知→神奈川、東京勤務でコンサルタントをしているシイと申します!強い経営✖️強い国づくりとは何かを考えみなさんと議論できればと思っています、(もちろんたまにゆるいことも!)よろしくお願いします!

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