この月は、仕入を増加させたため利益率が下がっています
いや、仕入を増加させても利益率は変わらないですよね??
???
財務を強みとするコンサル会社に入社し3ヶ月、ある会社の月次の試算表をまとめているときに報告した内容と上司からの指摘事項です。
今回は、
・仕入を増加させても利益率が下がるとは限らないのはなぜか?を解説し
・理論上はそうでも、とりわけ中堅中小企業において実態とずれる事例(粉飾も含めて)
を紹介したいと思います!
担当先の業績が大丈夫なのか気になる銀行員の方、
役員等に月次での業績を報告する必要がある方、
簿記を学んでいており、実務との関連が気になっている方等々
のお役に立てれば幸いです!
1.仕入を増加させても利益率が下がるとは限らない理由
今回は、一番考えやすい卸売業(物を購入し、別の会社に販売する業態)で考えてみましょう。
少し簿記を勉強された方だと次の売上原価の算式を見たことがあると思います。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
これは、BOX図と言われるもので図示するとこうなります。
では、実際に仕入を増加させた場合、また減らした場合このBOX図はどう変化するでしょうか?
実はどちらの場合も、売上原価の額は変化していないのです!!
なぜでしょうか?
それは、仕入の在庫に合わせて期末棚卸高が変化しているからです。
つまり、仕入を増やしても期末在庫が増える
もしくは、仕入を減らしても期末在庫も減る
場合、売上原価は変わらず売上総利益も変わらないということになるのです。
上司の冒頭の指摘はこのことを指しており、利益率を確認するには仕入に加えて、
期首在庫と期末在庫の変動も確認する必要があるという意味だったのです。
2.理論と実務の違い
しかし、現実とくに中堅中小企業を担当していると先ほど解説した
理論通りにはいかないことがままあります。
何がずれているのでしょうか?
それは、仕入と在庫変動が紐づいていないことを要因としています。
どういうときに起こるの?
例えば、仕入データと在庫データを同じシステムで管理をしており、
仕入をした商品のうち、販売できていないものを在庫データで自動的に
抽出する場合、仕入と在庫変動のズレは実務上も起こり得ません。
一方で、仕入データはいれているものの在庫データは毎月棚卸し(実際にいくつあるかを目で数えてエクセルで集計する)といった運用をしている会社はどうなるでしょうか?
もちろん、正確に数えることができていれば理論と同様ずれることはありません。
しかし人にミスはつきもので、
数え間違いをしてしまう
集計を間違えてしまう
こういったことは当然起こりえます。
そうなると、仕入と紐づかずに在庫が増えたり減ったりするので、
下図のように売上原価が理論値とずれていくのです。
3.粉飾(在庫を増加させることで、利益を増加させる)
せっかくここまで理解いただいたのであれば、たまにある在庫を使用した粉飾についても
紹介したいと思います。
さきほどの話を意図的に行えば粉飾は可能です。
どういうこと??
つまり、仕入とは関係させずに在庫を増加させればいいのです。
こうすれば上図のように売上原価が減るので利益が増えます。
では、在庫の粉飾を見抜くことは可能なのでしょうか?
難しいですが、在庫回転率という指標を使えば可能ではあります。
この指標は「一定期間で在庫が何回入れ替わったかを示す指標」であり、以下の算式で求められます。
在庫回転率=売上高/棚卸資産
特に金融機関の方は、
過年度からの推移を見て、回転期間が理由もなく増加していれば
すこし怪しいので取引先の社長に理由を尋ねてみてもいいでしょう。
以上、
1.利益率の確認には、仕入だけでなく在庫差を見る必要がある
2.理論と実務でズレが起こる可能性とその理由
3.意図的な粉飾の仕方と見抜き方
について解説してきました。
少しでもみなさんの役に立てれば幸いです!
それでは、また!!