久しぶりにとても気分が悪くなる番組を見てしまいました。

2024年の春季労使交渉の第1次集計は以下のようです。

全体の流れとしては間違いなく賃上げが行われているのは間違いないでしょう。

そのなかで、中小の賃上げをどう実現していくか?

そういうタイトルでのAbema のニュース番組だったのですが、

ゲストの田端氏はこう発言されました。

僕でも正直言うと、一人一人の中小企業経営者がやっぱりそういうガッツがないから、やっぱ日本経済が弱いと思う。結局ミクロの積み上げですよ、賃上げなんて

ABEMA Prime News

まともな感じでこういう発言をするインフルエンサーには

本当に辟易とします

私は、日々中小企業、なかでも赤字の企業をメイン顧客として、

どう再生するかを支援するコンサルティング業務を行っています。

そのなかで感じるのは、

経営者がしんどい状況に置かれながら

ときに悲壮感を漂わせながら、

どれほど真剣に戦っているかということです。

「経営者を降りて会社をたたんで自由になりたい」

そうぼそっと呟かれた社長もいます。

もちろん、個人保証(会社の借入金を個人で保証する)

もあるのでやめれないという側面もあるでしょう。

一方で、自分が畳むと決めたら

従業員の生活はどうなるのか?

そう思い悩み、親族に無理を言ってお金を借りて、

事業継続を必死の思いで続けている人がたくさんいるのです。

今回は、そんな経営者を見ている私だからこそ、

賃上げの構造・中小企業のリアルを書いてみたいと思います。

そして、個人のガッツの問題ではなく、

どうすれば、みんなで豊かになれるかを

考えていける材料となれば幸いです。

中小企業の実情

2024年の春季労使交渉の結果の再掲です。

これを見れば、

「中小企業も大企業ほどではないが賃上げできているではないか」

そう思われる方もいるかと思います。

そして、私のお客さんでも実際にベースアップできる余力がある

お客さんもいらっしゃいます。

一方で、赤字企業は本当に賃上げが厳しい状況です。

社長と話していても

「この業績では賃上げをしてあげたいけど厳しい」

との声をよく聞きますし、口が裂けても

「賃上げしましょう」と提案することはできません。

会社が潰れてしまいます。

2024 春季生活闘争 要求集計結果

また、先ほどの集計結果もすこし恣意的な集計に見えます。

組合数自体、7,128組しか集計していないことに加え、

50%弱は、要求を検討中弱の状況になっているためです。

この番組で中小企業の社長として、

登壇されている「小林鍍金工業」の小林社長も

赤字でありる一方で賃上げはしてあげたいので、

自分の報酬額を削減するとおっしゃっており、

実情として、こうした中小企業が多いのではないかと

考えています。

賃上げの構造

こういう話をすると、冒頭にもありましたが

すぐ個人の責任論を振りかざす人がいます。

EXITのりんたろーさんの発言です

ガッツがない企業を救う術はない

ABEMA Prime News

一方で、同じ番組で司会の平石さんは

こう発言されています。

中小企業とか非正規雇用の人たちが非常にしわ寄せをくらって

一部の人たちが高い給料をもらっている世の中でいいんですか。

ABEMA Prime News

素晴らしい発言だと思いますし、

少しだけこの発言の背景を推察して補足したいと思います。

ミクロ

ミクロかつ同番組でも触れられている観点で言うと、

なぜ賃上げできないのかと言うと、

仕事を依頼する大手企業が、

人件費を最低賃金で見積もった

見積りしか認めない

ということに要因があります。

こうなると、当然見積もり以上に賃金を上げると、

中小企業としては赤字になる構造になってしまいます。

立場が強い大手企業が

下請けいじめをしていると言う構造です。

3月15日の下の記事にもありますが、

公取委 企業公表 “多くの取引先と協議せず取引価格据え置き”

やはり、なかなか取引価格に応じる企業は多くないのでしょうね

マクロ

もう一つ国の経済状況をマクロ的に考えてみましょう。

BBCの記事でもあるように日本は現在2期連続で

GDPがマイナスになっています。

日本、予想外の景気後退入り GDPが2期連続マイナス

GDPとは、企業の売上総利益の総和なので、

全体として見ると経済が縮小していることになります。

一方で上場企業の純利益は過去最高との報道があります。

上場企業、純利益47兆円突破へ 最高益更新、24年3月期

結局どういうことなのでしょうか?

ミクロ的に見てもマクロ的にみても、

大手企業が、中小企業を搾取し、

その搾取分で賃上げが行われているという構造

なのではないでしょうか。

であれば、賃上げができない理由というのは、

経営者のガッツとかではなく、

その構造にあるのではないか

(経済学でいうゼロサムゲーム)

というのが平石さんの発言の趣旨であると思いますし、

私も完全に同意します。

赤字企業が潰れるとどうなるの?

さて、最後に赤字というのはガッツであり、

自助努力であり、

本人が悪いと言っている方に伝えたいことがあります。

田端さんは、BUDDICA DIRECTという会社の取締役とのことです。

BUDDICA DIRECT

中古車の通販とのことですが、

誰が購入しているのでしょうか?

それは、赤字企業の中小企業の従業員であることだって当然あるでしょう。

もしかしたら、その給与は社長が役員報酬を削減した結果

支払われたものかもしれません。

そんな会社がなくなると、当然車を購入する余力はなくなります。

結果として、自らのビジネスの悪影響にもつながるのです。

改めて、そう考えた時に

今自分のビジネスが好調だからと言って、

短期的利益を追求する個人・企業であっていいのでしょうか?

プラスサム社会

最後に伝えたいことがあります。

いかに我が道をひらく精進を重ねても、

国としての道が開けていなければ、

所詮はそれは砂上の楼閣。(中略)

つまりは、われ他人とともに懸命に考えて、

我が道を開く如くに、

国の道を開かねばなるまい。

松下幸之助 「道をひらく」

「失われた30年」それは、ただの砂上の楼閣だったのではないでしょうか。

そしてその理由は、構造上の問題を無視し、

個人の責任を問うようになったからではないのでしょうか。

であれば、大変難しいことかもしれませんが、

短期的利益を目先だけ追求するのではなく、

他人と懸命にどうすれば、

みんなが豊かになれるかを考えたほうがいいのではないでしょうか。

私は少なくとも日々、

本当に大変な経営者と対峙する中で

そう感じています。

みなさんの意見も頂戴てきますと幸いです。

それでは、また!

投稿者
アバター画像

シイ

兵庫→愛知→神奈川、東京勤務でコンサルタントをしているシイと申します!強い経営✖️強い国づくりとは何かを考えみなさんと議論できればと思っています、(もちろんたまにゆるいことも!)よろしくお願いします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)